7月5日号

さる六月二十四日の信金大会で小渕総理は故・小原鐵五郎会長の「貸すも親切、貸さぬも親切」は、金融人として誠に示唆に富んだ名言である−と挨拶されたが、日本国中が揃って「金融不安」のドン底状態にあるとき、改めてこの「小原語録」の先見性と重厚さに感服した。
◇そもそもこの言葉の発端は、小社・キンタイ出版部が昭和四十八年の八月五日に《庶民金融の真髄をつく》『小原鐵五郎語録』として発刊したのが最初である。
◇金融人−それも相互扶助の協同組織金融の信金人として「この道ひと筋」に徹した小原会長の数々の経験談と処世観を専門紙記者の視点から、より普遍性のあるものを選別。約二百数頁にまとめて編纂・出版したのが『小原鐵五郎語録』であった。
◇第一章 わが道ひと筋。第二章 信用金庫の人々と共に。第三章 金融制度への提言。そして第四章 金融人の心構え−の中の第一節に、世紀の名言となった「貸すも親切、貸さぬも親切」の項目がある。「金融人は常に反省と自己啓発に努めること。それが金融人として大成する第一歩である」「我々は単なる金貸しではない。貸す金が世のため人のためになるか否かの判断と決断が必要である−」云々。「貸した金が人さまや会社の命とりになるような融資は、断じてやってはならない。『貸さぬ親切』も必要なのだ!」と滔々と説いている。
◇さる七月一日。警察庁がまとめた昨年一年間の自殺者は前年比三五%増で三万二千八百六十三人に達したという。動機別では経済・生活問題の割合が急上昇で、企業別では負債・事業不振・倒産の順。個人では多重債務・生活苦。
◇二十六年前の「小原語録」は、奇しくも今なお救国への警鐘となりつつある。

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