金融タイムス・記者メモ <記者メモ>
5月15日号
見せかけだけの銀行の中小企業貸出

 都銀というのはえげつないやり方をするもんですね。
 都銀は軒並み今年度末で中小企業貸出が増えて、貸し渋りはしていない‐と胸を張っているんですね。
 でも、信金や信組といった中小企業専門の金融機関でさえ、新しい資金需要がなくて、貸出は減っている中で、おかしな話でしょう。日銀統計を見ても都銀は本当は今年一月までずっと貸出が減っている。四月十七日の予算委員会で、早速、民主党の議員がそこを突いていますね。
 で、よくよく調べると、これにはカラクリがあったんですね。都銀はここ二、三月で、突然、貸出が何兆円も増えているだけなんです。なぜ都銀が急に貸出が増えたかというと、実は彼らは、うわべだけでも景気の良さそうな中小証券会社をはじめ、優良中小企業めがけて、ここ一、二ヶ月の短期で集中的に貸し込んでいるだけなんですよ。
 都銀は公的資金による資本注入の見返りに、経営健全化計画を再生委に提出しており、その中で中小企業貸出をこれだけやります、と謳っている。
 だから是が非でも約束した数字だけは達成しなきゃいけないというわけで、格好だけの見せかけの数字作りをやっているわけです。
 普段は中小企業になんか貸し渋りをしておいて、見向きもしないくせに、公的資金の関係で最後になって数字だけのつじつま合わせをしているだけ。まさに「理念なき偽りの経営」なんですよ。(某信金理事長談)
 

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