1998/12/15号
新ディスクロ基準決まる

金融機関の債権の新開示基準がこのほど決まり、 金融再生法の中に盛り込まれた。
今年に入ってから特に「第二分類」の取り扱いについて、さまざまな立場から議論が噴出していた。
 日銀や金融監督庁では早くから第二分類を「灰色債権」と表現。二分類を細分化し、四〜六つに分割するなどして、三分類に近いものには重い引当を積ませる方針を示していた。
 マスコミでも当局の言うまま、疑問もなく、「第二分類」を「灰色」「灰色」と称し、あたかも金融機関が本来第三分類にすべき債権を二分類というグレーゾーンに押し込めているかのような報道をした所も少なくなかった。
 しかし、実際には、「赤字先」=即、「二分類」。きちんと毎月利息を払っている先が、赤字というだけでみな二分類となる。現実問題として、中小企業の多くは経営が脆弱であり、その上、長期不況が重なって、赤字先が約七割を占めるという惨状にあるが、こうした先はみな「第二分類」にくくられてしまうことになる。
 そこで、中小企業のため貸し渋りもせず積極的に融資している信金業界は、「第二分類の開示、一律強制引当が行われるようになれば、我々も中小企業融資は手控えざるを得なくなる。我々も、信用金庫としての社会的な役割を果たせなくなる」として、全信協を中心に反対運動を展開してきた。

 
金融再生委員会が発足
長銀・日債銀等の特別公的管理(一時国有化)銀行への対応をはじめ、今後の金融機関の監督全般を行う「金融再生委員会」が、十二月十五日、発足した。
 柳沢伯夫金融再生大臣が委員長。委員は、磯部朝彦氏(日立総研社長)、片田哲也氏(コマツ代表取締役会長)、清水 湛氏(前広島高等裁判所長官)、中地 宏氏(日本公認会計士協会会長)の四氏で、広く民間企業関係者や専門家を集めた。
 再生委の下に、事務局、国有化銀行の取得株価を決める株価算定委員会、金融監督庁が従う形。
 株価算定委は落合誠一東大大学院法学政治学研究か教授を委員長に五名。
 事務局は、森 昭治事務局長をはじめ、事務局次長に東京高検検事の大谷 男氏、総務課長に日野康臣金融監督庁長官官房参事官ほか、内閣総理大臣官房付、東京国税局、建設大臣官房付、大蔵省大臣官房参事官・企画官、通産省貿易局−と、関連政治・官庁セクションから構成される。
 同日開かれた再生委第一回会合では、この日選任された各委員の顔合わせのほか、毎週木曜日に定例会議、必要に応じて臨時会議を随時開催することが決まった。十二月中にあと三回の会合を開くこととし、金融システム再生に向けてスピーディーかつ密な対応を図っていくことが確認された。

理事長に大木氏(摂津)   ー全国信金厚生年金基金
 信用金庫の年金基金を今後どのように健全化方向へ導いていくのか注目された信金年金基金の理事会が、十二月二日開かれ、理事長に摂津信金の大木令司理事長が満場一致選任された。
 副理事長については、とりあえずは空席とし来年三月までに決めることになった。
 また、続いて開かれた代表員会において、監事に日興信金・宮永正巳理事長と北上信金・飯盛孝志理事長が選任されるとともに、員外監事として引き続き入江 慧氏が選ばれた。

中央信託、拓銀本州部分譲渡で  「新世紀バンク」スタート!
十一月十六日、北海道拓殖銀行の事業譲渡が行われ、本店を含む北海道部分は第二地銀の北洋銀行(頭取・武井正直氏)に、東京営業部をはじめ首都圏を中心とした本州部分は中央信託銀行(社長・遠藤荘三氏)に譲渡され、新たなるスタートを切った。
 この日、本州地区五十九店(うち首都圏五十四店)の各店では、中央信託銀行の新店舗として朝礼が行われ、ビデオによる遠藤社長の訓辞、支店長のあいさつに続き、午前九時に一斉にテープカットが行われた。
 これにより、中央信託銀行は、全国に百十一ヵ店という信託銀行最大のネットワークを有する新しいタイプの銀行に生まれ変わった。

 
資本の増強と再編を厳しく求めるー早期是正措置改正で
 金融早期健全化法の公布を受け、十一月十六日、早期是正措置の発動基準の一部が改正された。改正されたのは自己資本の充実に関わる部分(銀行法施行規則第二十一条の二など)。
 これまでは、国際行で自己資本比率〇%以上〜四%未満、国内行〇〜二%未満のみに「自己資本の充実」が求められ、これより上の区分の国際行四〜八%、国内行二〜四%の金融機関には、漠然と経営改善計画の実施が求められただけだった。しかしこれに甘えて早期にリストラや経営方針の転換を行わなかった金融機関は、「八%未満の国際行、四%未満の国内行は“落第生”」とみなす市場からの圧力に晒され、金融システム全体まで大きく揺らぐ結果となってしまった。
 そこで改正案では、早期健全化法で金融機関に対する公的資金注入の枠組も整ったこともあり、著しい過少資本行(国際行二〜四%、国内行一〜二%)とともに、過少資本行(国際行四〜八%、国内行二〜四%)に「資本の増強」を明確に求め、早期の経営健全化を厳しく促している。

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