2000/10/5号
ネットビジネスのリーダーめざす!
さくら、住友、インターネット専業銀行をスタート
 日本初の「インターネット専業銀行」、ジャパンネット銀行が、十月十二日、華々しくスタートを切った。
 開業当日の東京會舘での記者会見には、報道カメラマン三十人、テレビカメラ十台以上が殺到。
 壇上には、インターネット銀行構想を発案したさくら銀行(資本金二百億円のうち五〇%出資)、同行と明年四月に合併する住友銀行(一〇%)、提携企業の富士通(一〇%)、日本生命(一〇%)、東京電力、三井物産、NTTドコモ、NTT東日本(各五%)の社長、重役クラスが顔を揃え、並々ならぬ期待を窺わせた。
 当初は、さくら、住友、それにオープンシステムやセキュリティなどシステム技術部門を担当する富士通が提携してこの事業を進める程度のものだったが、「インターネット専業銀行」の先進性と「老舗の大手都銀」の信頼性からか、あれよあれよという間に次々大手企業の参画が決定したもの。
会見でさくら銀行・岡田頭取は、「インターネットでの金融サービスが近い将来、日本でも大ブレイクすると見て準備していた。提携企業の協力で、わずか一年でスピーディーにスタートすることができた」。住友銀行・足助副頭取は「先行企業として、ネットビジネスにおけるリーダーシップの発揮を目指す。重要かつ意義深い一歩」と、ネットバンクの“先陣”を切ったことを強調し、期待と喜びを滲ませた。
「IT革命のメリットを体現する新コンセプトの銀行」(住友・足助副頭取)として、ローコストによる魅力的な金融サービスの提供や、提携各社との事業展開で、既存の銀行や業界にない新しいインパクトを期待する。
 具体的には、同行の一番の目玉商品は、「ネット定期」。既存行の一・六倍〜二・六倍の金利を掲げる。
 ネット上の振込手数料も、自行へは一律五二円。他行への一六八円(三万円未満)、二六二円(三万円以上)と、既存行の約「半額」としている。
 さらに、ウェブ(インターネット)上でのフルバンキングサービス。普通預金、ネット預金、メール預金、クレジットカード、iモード、ネットデビット、カードローン、オートローン、振込などを知らせるeメール通知サービス、BSデジタルやWeb TVといったインターネットテレビ−等々、「インターネットでどこまでできるのか」、新たな可能性も探る実験的な幅広い業務展開を考えているようだ。
 もちろんすべてウェブ上で、「二十四時間、三六五日」、新約、解約、振込、振替、決済が可能である。(入出金は、さくら銀行の本支店ATM・CD四三二五台やコンビニ「am.pm.」のATM九四〇台で行える)
 同行では、こうした金融サービスを武器に、「三年後百万口座一兆円」を目指す。運用はローンを九百億円計画し、「収益十億円」を見込む。三年で黒字転換、五年で繰損解消を目指す。


ネット銀行、成否のカギは…?
○インターネット銀、先行各社は成功
○インターネットより電話が主?
○「商品性」が勝負に
○「提携」の落とし穴

ネット銀行のターゲットは中間富裕層
 各インターネット銀行のターゲットを見ると、中間富裕層以上が多い。  オリックス信託の一人当たり平均預金量は七百五十万円。京都信金は三百万円が狙い所。ジャパンネット銀行などは、三十万円未満の顧客には月千五十円もの口座維持手数料を課し、細かな客を遠ざけている。  信金が足を使って人件費をかけて小口の客を集める。その隙に、大手金融機関が金も時間も手間もかけずに上客をゴッソリと持って行くという図式のようである。  もちろん、信金顧客の中心は融資がほしい中小企業であり、インターネット銀行ができたからといっていきなり信金経営の屋台骨が揺らぐわけではないが、銀行が次々経費削減策を打ち出し中小金融機関を引き離す中、ローコストでの純預金者やリテールの取り込みは、信金にとっても重要な課題となろう。

オープンシステムを採用。コストダウンとスピードを
今回、さくら、住友が立ち上げ費用がかかるのにわざわざ「別銀行」としてインターネット銀行を立ち上げたのには、コストを削減するとともに、ITのめまぐるしい変化に合わせ機動性を確保する狙いがあったようだ。
 「新しい枠組み」は、「システム」と、「組織」の二面で作られた。
 システム面では、現状、両行のシステムは汎用機を利用しているが、ジャパンネット銀行では、富士通の「オープン・システム」を採用。「オープン系は、コストが安い上、新しいニーズにスピーディーに対応できる」(NTTドコモ)のが特徴。「ITの進歩は早いが、汎用機では、変化に対応し本体システムをいじろうとすると大変なことになる。その点、オープンシステムはすばやくシステム更改ができる」(住友銀行・足助副頭取)ことから採用された。
「さくら、住友の、ベンダーの違う汎用機の統合や新システムへの切り替えにはかなり時間がかかるが、それではIT時代に乗り遅れる。そこでとりあえずインターネット関連でオープン系を先行スタートさせたのではないか。順次、両行のインターネットバンキング機能を新行に統合させていく可能性もある」(信金関係者)とも見られている。
 また、「組織」の面では、新行は西新宿に本店を一つ置くだけ。若手の宮井社長以下、わずか百人体制で切り盛りする。
 人数が少ない分、社内決済も早い。通常、十個必要な判も「三つ、四つの判で決済できる」(出資企業)。「提携企業との共同戦略を打つにも、独立した銀行の方がやりやすい」(さくら銀行・岡田頭取)ということのようである。
 もちろん、コスト面でも従来の銀行より格段に安い。営業費用は、CMなどの広告のみ。顧客一人当たり三千五百円で済む計算だ。

信金次期システム構想、一歩前進
近く「システム戦略会議」創設
 第二回関係者協議会で、全国システム実現の方向へ

 約一年半の討議を経て今年七月に全信協に答申された「信金次期システム構想」は、東京共同事務センターの一部理事と事務局サイドの真っ向からの「反対」を受け「膠着状態」にあったが、十月十一日開催の第二回信金次期システム関係者協議会で全代表者が同構想に基本的に賛成し、構想の「具体化」に向けて動き出すことになった。
 当日の協議会では、まず次期システム構想についての意見が各メンバーに求められ、「構想には大賛成。とにかく早く進めてほしい」(某地方信金)、「職員や組織の問題など、解決しなければならない問題がいくつもある。こうした問題がどうなるのかまだ見えない」など、構想の「具体化」を求める声が相次いだとされる。

 まず、「システム戦略会議」設置を

 そこで全信協・鈴木常務理事より、今後の信金次期システム推進問題については、全信協の中にシステム問題意志決定の最高機関として、自営金庫、共同金庫の代表者から成る「システム戦略会議」(全信協・加藤敬吉会長が代表)を新たに設置し、その下に各検討委員会組織を設けて、具体的に実現の方向へ向け、早急に進めていってはどうか、との提案があったとされる。
 この提案に、各メンバーは全員賛成。「システム戦略会議」の人選については、「全信協会長に一任」することを決定したものである。  


金沢、愛媛、高山が合併スタート
 十月一日、愛媛信金と伊豫信金、高山信金と神岡信金、さらに二日、金沢信金と加南信金が合併した。
 いずれも、地場産業の衰退や沈滞を抱え、また金庫規模も三、四百億円弱の小金庫が、二十一世紀への生き残りのため、地域の主要大金庫と合併したもの。
 今回の合併により、愛媛信金は預金量四千億円に乗せ、金沢信金でも「五千億円」、高山信金は二千億円が射程距離に入ってきた。
 将来的な生き残りを賭け、経営基盤の強化を図りながら、いかに地域の産業の活性化に役立つか、これからの役割が期待されている。
 なお、いずれの合併とも、預金、貸出金、職員など「現状維持」の対等合併のため、預金の流出は軽微なものにとどまっている。
 今後も信金業界では来年四月に福井・福井中央・鯖江が、規模拡大のため合併する予定だが、「地方は地元経済の先々を見通しての早め合併が多く、前向きに二十一世紀が展望できる再編」(信金関係者)のようである。

 

関東の景気、厳しい中にも緩やかな改善?
−中小企業との実感とはズレ

大和銀行、奈良銀引き受けへ
 大和銀行グループでは、十月十一日、奈良銀行との提携に基本合意し、また、十日には、なみはや銀行行員の再雇用の内定を決めた。奈良銀行は、預金量一六〇七億円、従業員数三三七名の小銀行で、二十一世紀への生き残りのため、大和グループとの提携を決断したもの。なみはや銀行は、先に破綻している。
 大和銀はすでに近畿大阪銀行とグループ関係を築いているが、今回も関西の地域銀行の引き受け役を担い、スーパー・リージョナル・バンクとしての役割を果たすもの。
 大和銀と奈良銀行とは、資本関係を強化し、持ち株会社方式による統合も含めて検討していく。
 大和、近畿大阪、奈良の三行合わせた預金量は、一五兆二一七四億円、貸出金一三兆八〇七一億円。有人店舗数七三四カ店。従業員数三九四名。
 また、なみはや銀行行員の再雇用の内定は、正行員九四二名、嘱託職員五七名、パート一名の計一千名を近畿大阪銀行(大和銀へは出向の形)が引き受ける形。


新潟中銀は分割譲渡に  
 先に破綻した新潟中央銀行が、大光、第四、八十二、東日本の各行に分割譲渡されることとなった。
 これは新潟中銀が広範囲に店舗を有していたためで、新潟県内の店舗を大光と第四が。長野県内及び新潟県内の一部店舗を八十二銀行が。東京都内と埼玉県内の店舗を東日本銀行が引き受けるもの。
 ただし、これらの営業譲渡の基本合意書は九月二十九日に締結されたものの、群馬県内の店舗の引受け先が、まだ決まっていない。
 関係者は、群馬県内も含め、今年十二月末日を目途に、すべての営業譲渡契約を締結したいとしている。

 
全国信金、12月からATM相互利用手数料無料化
 全国の全三八一の信金は、十二月四日からCD・ATMの相互手数料無料化を始める。都内の信金もすべて参加する。
 信金業界では、長らく都内金庫の反対によりCD・ATMの全国相互手数料無料化が実現できなかった。「しかし、東信協や全信協が非公式に反対や疑問を持っている金庫に説明に行ったようだ。何かと業界と足並みが揃わない某信金も、当初は『信金間のATMの利用がどれくらいあるかわからないし』と態度を決めかねていたが、調べてみたところ、結構、利用があることがわかり、最終的に無料化に参加した方が顧客サービスの向上にもなるし得策―と判断したようだ」(関係者)と言う。
 なお、「信金業界に続け」とばかり、信組業界でも、CD・ATMの全国相互手数料無料化について検討を始めた。近く全信中協でも取り上げられる方向。意外と職域、業域信組からも「信組のPRになって良いのではないか」との声が出ており、むしろ、利用の多い都市型信組と少ない地方信組との意見調整が課題となりそうだ。
 信金のCD・ATMの相互手数料無料化は、信金のキャッシュカードがあれば、北海道から沖縄まで全国の信金の自動機、約一万九千台のどこでも手数料ゼロで現金の入出金ができるもの。無料時間帯は、平日が午前八時四十五分から午後六時まで(入金及び出金)。土曜日が午前九時から午後二時まで(出金のみ)。信金の自動機ネットワークは、郵貯に次いで金融業態第二位の規模だけに、顧客の利便性向上と信金のPRに役立つものとして期待されている。

 
朝日、3年連続5度目のサッカー優勝





バックナンバー読みもの出版のご案内