2000/9/5号
千葉県金融、大同合併が加速
千葉、木更津、成田合併で1兆円に
 【千葉】千葉県の千葉、木更津、成田の三金庫は、来年五月をめどに対等合併することで合意し、八月二十八日に幕張プリンスホテルでの共同記者会見で発表した。三金庫合わせた預金量は一兆二七四億円。関東で四位、全国十六位の規模となる。
 千葉県内には信金が十一あったが、平成十年に千葉信金と両総信金が合併。またトップが大蔵省OB組≠フ東京ベイと松戸が来年二月に合併。さらに今回の三金庫合併で、七金庫に統合されることとなる。
 会見当日は、まず三金庫の理事長らが合併の趣旨を説明。
「合併の話が出たのは今年二月頃から。金融ビッグバンや金融システムの改革が急速に進展しており、この変革の時代を乗り越えるためには、三金庫が結集して、経営の合理化、効率化を進め、強靭な経営体質を築くことが肝要―との認識に至った。
 また三金庫は、『千葉新産業三角構想』の幕張メッセ、かずさアカデミアパーク、成田国際空港をそれぞれ営業エリアに有しており、今回の合併は、こうした千葉県の中心部をなす地域を結び付け、二十一世紀に相応しい業務展開を図れる信用金庫になることを目指している」とし、「今後ますます信頼される地域金融機関として、地域社会の発展に一段と貢献していきたい」と結んだ。
 千葉信金が存続金庫となり、本店は千葉信金の本店に置く。新金庫の名称や、合併後の役員については未定。
 店舗(計九三店)や職員(計一五八一名)については、今後設置される合併委員会(各金庫から二名程度)で検討されるが、現状でも市原市内に五店舗、成田に二店舗の計七カ店が重複し、さらに近隣店舗も加えると相当数が統廃合の対象になると見られる。
 なお、三金庫とも、十一年度決算は赤字(千葉信金は▲五二億円の当期損失、木更津信金は▲六億円弱、成田信金は▲一八億円)だが、千葉信金では、
「十一年度は七九億二三百万円引当て、五四億円ほど積立金取崩しを行ったが、業務純益は前年度比二一%増の三五億四一百万円上がっている」。
 木更津信金は「毎年、業純は三十億円程上がる体質。来年からは業純の範囲内で償却できると思う」。
 成田信金は、「十一年度の業純は一五億七千万円。検査によりリスク管理債権が増え、二四億八二百万円処理したため、一八億二千万円の損失となった。しかし、中身は税効果会計の計上過多が一二億六三百万円あり、未収利息のうち九億二千万円を償却したため。今期はもう一掃されたため、次期決算は黒字になる見込み」と、それぞれ来期からは黒字転換できる見込みを述べた。
 合併後の新金庫の自己資本比率は五・三六%となるが、「自己資本比率は早期に六%に持っていきたい」(木更津・白石会長)とし、質、量共に磐石な経営内容を築き上げていく方針。なお、三金庫は「公的資金などの支援を受けることは今のところ考えていない」としている。
 「一兆円金庫誕生」のビッグニュースを、各記者たちも前向き、好意的に受け止めたようで、合併の意義やIT投資など今後の展開に絡んだものなど、将来へ向けての明るい質問が多く出された。  
【三金庫の概要】
 千葉信用金庫 理事長=三橋 勤◇預金量=五二五八七一百万円◇貸出金=三六七一億五七百万円◇預貸率=六九・八%◇役職員数=七六六人◇店舗数=四七
 木更津信用金庫 理事長=伊藤彰正◇預金量=三六一九億五五百万円◇貸出金=二四〇七億九一百万円◇預貸率=六六・五%◇役職員数=五六六人◇店舗数=二八
 成田信用金庫 理事長=宮崎廣郎◇預金量=一三九五億七九百万円◇貸出金=七七五億四六百万円◇預貸率=五五・五%◇店舗数=一八


そごう破綻が合併の引き金に?
 【解説】三金庫の合併は「そごう破綻≠ェ、合併の引き金を引いた」―。地元の金融関係者の間では、こんな見方が広がっている。
 そごうは当初、債権者順位七十三番目までの金融機関が計六千三百億円の債権放棄をし、再建を目指すはずだったが、新生銀行(旧長銀)が準メイン行として約一千億円の債権放棄をしようとしたことから、「そごう救済に税金を使うな!」とマスコミ、世論から集中砲火を浴び、一転、民事再生法による処理に切り変わった。
 こうした中、木更津そごうは売上の長期不振、債務超過のため、すでに四月に閉鎖方針が固められており、七月十三日に自己破産を申請した。
 地元木更津信金の木更津そごうへの融資額は約七億七千万円。業純三十億円程度の同金庫にとっては、大きな金額と見られる。同金庫は十一年度までにそごうを「破綻懸念先」として引当金を積んで処理し赤字決算を出したばかりなのに、「破綻先」となったことで次年度決算でさらなる追加引当金を迫られることになった。
 

全信連、「金融財政事情」に異例の反論
しんきん中金となっても、信金のための組織と強調
 全信連広報部では、金融財政事情研究会発行の八月二十八日付け特集「全信連から信金中央金庫」への中で、事実と異なる箇所があり、来る十月一日からの名称変更を前に、業界に無用の誤解を招きかねない―として、異例の反論を出した。
 これは、今回の名称変更が一連の全信連の信金離れとともに信金管理の方向をめざす―といったような形で記事が取り上げられているために具体的な形で反論・真意を説明した形となっている。特に全信連の単独法制定云々については、片や信用金庫のためのホールセール金融機関、かたやリテール金融機関で組織や業務内容が異なるのに、未だに全信連と信用金庫を同じ法律で律すること自体数々の不合理が出ている現状を指摘。法制定当時は、規模も小さかったため同じ法律で良かったものの、信金の成長とともに、全信連業務も多様化。特に現在のような、経済の低迷に伴う融資先の減少で信金の余剰資金の預け入れが急増している状況では、効率的な運用が不可避となっている。むしろ資金運用やシンジケート団参加など銀行業務部分が強くなっているのに、現在の信金法内では制限が多く、信金のための効率運用が妨げられる畏れもでてきていることから、信金側からも全信連にホールセール特化を促し、儲かる全信連、効率運用できる全信連を望む声が多い。今回の記事は、こうした信金業界の方向に水をさすものだけに、記事を疑問視する向きも多い。


湘南信金、3連覇飾る
東京ベイ、1球に泣く―関信協野球大会
 

酷暑に熱戦続く
東信健保テニス大会
 

民事再生法の恐怖
新たな貸し渋りの原因にも?
   

信金次期システムに採用されるLinuxとは?  
○―信金システムを巡って、様々な論議がされているが、早くもベンダーの意を受けた?動きがでているようだ。
 ある関係者は、某メーカーの招待?を受けて、カリフォルニアでのセミナーを受けたというし、一方で誰が決定権を握るのかを巡り、いろいろな牽制があるのだという。
 ○―今回の信金システムは、都銀以上に全国三百八十余の信金―約一万近い支店をリアルタイムに故障なくできて当然システムを作るため、都銀等とは桁違いの大規模なシステム構築となる。
 ○―一方、これを動かす基本システムソフトには、Linuxが採用されるという。
 今パソコンで使われているウィンドウズ九五や九八、二〇〇〇、NT三・五一、NT四・〇といったものと同じ基本システム。
 もともとはメインフレーム等で使われていたUNIXをベースに、リーナス・トーバル氏により作られたものだが、世界中の技術者が、そのオープン思想に共鳴し、共感して開発しているもので、急速にシェアを伸ばしてきている。
 ○―主な用途としては、インターネットや沢山のコンピュータをつなぐネットワークに適しており、安定度では既存のマイクロソフト製品を上回るともいわれ、システム開発に携わったものであれば容易に理解できるという。
 これに便乗して、各ベンダーも、Linux対応のサーバーマシンなどを出してきており、オープンで信頼性が高いとして、急速に企業に普及しつつある。
 ○―それではなぜこんなにLinuxがもてはやされるのだろうか。
 基幹となる部分が、一般に公開されていてしかも無料の点が大きいだろう。
 ソフト面では、どこぞの製品と違って、世界一の金持ちを作らないということだけでなく、誰でもが参加できる開発環境にあり、全世界がシステム開発に加わることができること。 
 ハード面でも、最新・最高速を誇るマシンが必要なく、むしろ少し性能的にも古くなったような機械でも、部品精度は別として、十分活躍できること。
 いわば今の循環型社会に適応したリサイクルに対応した点で、新しいもの―技術ができたからといって、常に新しいものに買い換える必要がない点などがあげられる。
 ○―勿論、こうしたよいことだらけのLinuxというのではない。
 誰もが簡単に扱える―とまでには至ってないし、また使えるアプリケーションソフトもまだまだ少ない。 また、セキュリティー面や信頼性といった点でも、まだまだ心配するところも少なからずある。
 ○―それでも、沢山の小さなサーバーが、一体となって個々の信金のニーズに素早く対応していく姿は、まさに信用金庫が育ててきた日本の裾野金融―中小企業金融を象徴しているようだ。
 それだけに早い時期の解決と、透明性の高いベンダー選びが求められる。 





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