2000/6/8号
小渕前総理、永眠
平成金融恐慌を未然に防ぎ、金融システムの再生に力尽くす
 六月八日、日本武道館で小渕前総理の内閣・自民党合同葬が執り行われ、約六千人の参列者が最後の別れに訪れた。当日の模様と、小渕前総理の金融・経済分野における政策実績を振り返った。
 「小渕政策」で筆頭に挙げられるのは、六十兆円枠の公的資金のバックアップで“平成金融恐慌”を未然に防ぎ、金融二法(金融再生法、金融機能早期健全化法)の制定で金融システム再生に力を尽くしたことだろう。また、緊急創設した、当初二十兆円枠の安定化保証制度。これにより不況と貸し渋りにあえぐ中小企業の金融の円滑化を図り、連鎖倒産を防止。当時、「政府が中小企業の方を初めて向いてくれた“百年に一度”の政策」と言われた。

興産、神田合併スタート
 興産信金は、同じ千代田区に本店のある神田信金を吸収合併し、六月五日新生興産信金としてスタートした。
 午前八時五〇分からのテープカットには、木村千代田区長、信友会中曽根会長、顧客代表で江戸時代から続く火消し鳶職の、西出氏に興産・石原静夫理事長の四氏によっておこなわれ、新生興産信金の門出を祝った。
 【解説】興産信金の神田信金との合併は、預金者だけでなく健全な融資先も保護し、善意な出資者保護も併せて行う観点から、一旦合併される側の金庫を解散させ、預金と健全先を合併側金庫に、不良債権を預金保険に売却すると共に、相援資金から善良な出資者も保護するとのことから、新たに出資金を出し信金を作って合併させるという破綻合併スキームに則ったもの。
 今回、神田と合併したことで、興産信金は名実共に千代田区内に本店をもつ唯一つの信用金庫になったばかりでなく、合併で神田の飯田橋、市ヶ谷など新たな店舗が加わったことで、神保町から渋谷までの西側店舗の補完が行えることになり、より機能的かつ効率的な顧客サービスが提供できるようになる。
 また合併によって待望の三千億円信金となるため、これまで以上に経営基盤強化と地元中小企業の育成に集中できる。
 なお旧神田信金から新たに九十九名が新生興産信金に加わったが、これにより人材の有効活用によって、顧客の要望に迅速かつ的確にできるとしている。  同信金首脳は、この合併を期に地元・千代田区を中心に、さらに地域金融サービスを徹底し、地域ナンバーワンを目指すと語っている。 

旧長銀、「新生銀行」に
 同じ六月五日には、旧長銀が「株式会社 新生銀行」と名前を改め、スタートを切った。
 一時国有化となったのが平成十年十月。しかし譲渡条件の調整は難航を極め、四兆円以上もの公的資金を投入し身ぎれいにした上、「瑕庇担保責任」という二次ロス三年間穴埋め特約も付け、わずか十億円の「叩き売り」状態で、ようやく今年三月一日、ニュー・LTCB・パートナーズに譲渡という形となった。
 この長銀の事業譲渡で大きな焦点となったのは、要注意企業の取扱いだった。 旧長銀の融資先には業況が悪化し、大量に社員を抱える大企業(大手流通、大手ゼネコンなど)が目白押し。もし融資がストップし、こうした企業が一社でも破綻すれば、数万人もの「雇用問題」に発展するおそれがあった。
 当初、米JPモルガン―オリックス連合、中央信託―三井信託連合、仏パリバも譲渡先として名乗りを上げたが、最終的には中央信託・三井信託、米リップルウッド社(ニュー・LTCBの主な出資者)に絞り込まれ、結局、後者に決まった。
 この背景には、連合軍≠ヨの譲渡となると、結局は融資先がバラバラに引き取られ、比較的内容の悪い融資先を拾った譲受側が融資をストップし、そこを「整理」する可能性があった。そのため譲受先は一社だけで―との配慮があったという。
 また、二次ロス補填の制度がない日本で、民法の「瑕庇担保責任」(売買した物に欠陥があった場合、売り主が責任を取る。旧長銀、旧日債銀の譲渡とも、譲り受けた貸出資産が二割以上減価した場合、「譲渡」が解除でき、この資産は預保に差し戻されることになる)を駆使して事実上、二次ロス補填を約束したのも、そのため。
 その一方で、今年度に入り、日貿信(ノンバンク。負債二八九九億円)、ライフ(広島の信販会社。負債九六六三億円)、第一ホテル(負債一一七〇億円)等、旧長銀の融資先で債務超過の所が、旧長銀から融資支援を得られず相次いで事実上倒産≠オている。
 こうした中、現在、注目されているのが、そごう。経営危機で六千三百億円超の債権放棄を七十数金融機関に打診しているが、そごう存続の鍵を握るのが準メインの旧長銀の対応。もし「債権放棄」に応じれば、本格的に融資先の再建に協力すると見なされ、同行は預保への債権差し戻しができず、貸出資産を自分で抱え込むことになる。一方、債権放棄に応じず、結果、融資先が潰れてしまえば国が一切の処理をしてくれるが、それでは同行が融資先企業を支える役割を果たさないことになる。
 そこで、「一旦、預保に債権を買い戻した上、同行が債権放棄する」という「ウルトラC」案が浮上。八城頭取もこの方法を示しながら「社会的影響を考えて(そごうへの対応を)検討する」としている。   

信金ATM、本当に便利?
無料化しても、身近になければ…
「信用金庫はネットワークが強み」とよく言われる。確かに、平成十二年三月末の各金融業態の「店舗数」を見ると、都銀二八四九店、地銀七八二四店、第二地銀四五七〇店、信託三九七店、信金八六三八店と最も充実している。「ATM・CD台数」も、全国に一万九一三六台で、銀行一の一万二百台を超える台数を持つ三和銀行を凌ぐ。  ところが、「ATM全国無料化」の意味は、用事で他市へ行ったり、旅行や出張で遠出した時にどこの信金ATMでも無料でお金を下ろせることにある。この点、信金は駅前にATMがないことも多く、今のままでは利便性がどうかとの声もある。   

“マスコミリスク”で自己資本比率のバー、上昇へ
 各信金で出資金増強の動きが盛んになっている。特に相対的に自己資本比率が小さい大都市の大手信金で顕著で、一兆円クラスの信金では百億円近く集めるケースも散見されている。  背景には、この三月期決算で各信金は赤字も覚悟で不良債権を一気に償却し、その分、自己資本比率が減るので、そのバランスを取るということがあるが、もう一つは顧客に健全性を示すために、「自己資本比率のバーを一段上げよう」という考えが出てきている。  つまり、今までは、自己資本比率四〜五%台でも金庫側は「それだけ地元に貸しているのだから」と泰然としていたのだが、今期は「赤字や、黒字の減少となる上に、自己資本比率が下の方では、顧客が不安に思うのでは」との配慮がある。  ある金庫理事長は、「ランキング本の影響が大きい」と率直に話す。  

年金基金常務に、猿渡氏(しんきん証券常務)内定
 全国信金年金基金では、今年九月で退任予定の古田常務理事の後任に、しんきん証券鰍フ猿渡通夫常務取締役の就任を内定した。
 猿渡氏は昭和十七年十月生まれの五十七歳。福岡大を卒業後、全信連入会。平成六年五月に常勤理事に就任。市場資金部長など全信連の資金運用部門で手腕を発揮してきた。
 従来、信金年金の常務は歴代全信協幹部職員出身となっていたが、今後資金運用などで一層の専門性が要求されることなどから、適材人事の派遣を全信連に要望していたもの。  

結城信金・長村理事長、勇退へ
新理事長に渡辺専務
 

三浦藤沢、住宅ローンセンターを開設
 【横須賀】三浦藤沢信用金庫(理事長・小川善久氏)では、六月一日、本部前の横須賀市小川町六に、住宅ローンセンターを新設した。
 同金庫は、京急・横須賀中央駅前に相談センターを持っているが、これは税金、年金なども含めた“よろず相談所”。“住宅専門”の相談センターを設け、年末、年末年始と祝日を除き「年中無休」、土日も営業することで、勤労者等の住宅ローン需要をキャッチする。
 センターには四名の職員を置き、住宅ローンの相談受付、融資申込受付だけでなく、融資実行前の諸手続までを行うことで、スピーディーなローン実行につなげていく。なお営業は平日、休日とも九時から五時まで。
 とりあえず同センターは横須賀市、三浦市、逗子市、葉山町からの案件が中心となるが、同金庫では今後、横浜、藤沢方面にも順次、住宅ローンセンターを設置し、一層、住宅ローン需要を取り込みたい考え。
 

関信協総会、健全経営を再確認  
 

専門紙協、理事長に亀尾氏
 

太平信金、山村常務が専務、鈴木理事が常務に
 




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